貼り付け型の小型制振アイテムは、オーディオ界では広く知られる製品ジャンルです。弊社のレゾナンス・チップ・シリーズも発売から20年以上の歴史と10万セット以上の販売実績があり、多くのオーディオ愛好家、プロのレコーディング・エンジニアなどにご愛用頂いております。
2020年に発売したピエール中野氏プロデュースのレゾナンス・チップ・ピエール(通称:ピチップ)が製品ラインナップに加わったことで、弊社の制振技術は幅広いユーザー層に知っていただく機会を得ました。それらのユーザー層に対し、「ピチップの制振技術による効果を、より分かりやすく紹介したい」 というピエール中野氏の依頼を受け、ピチップの音響測定を実施することにいたしました。
今回は、大手オーディオ・メーカーのヘッドホン/イヤホンの測定評価で実績のある株式会社サザン音響に、ピチップの計測、及びダミーヘッドを使用したピチップ有無での録音を依頼。同社の高精度音響測定機器による測定結果をここにレポートさせていただきます。
(協力:Hi-Unit / 有線ピヤホン1提供)
ピチップは周波数特性の変化を狙ったアイテムではないので、上記の計測結果では当然ながら変化を見ることができません。仮に周波数特性上で特定の周波数での増減が見られるような結果となる場合、固有の音質癖を持つアイテムとなってしまう恐れがあります。音楽再現に好ましくない影響を与えないためにも、ピチップは周波数特性上に変化が無いように開発されています。
【サザン音響による測定データの解説】
最初の周波数特性計測では、イヤホンから出る直接音とダミーヘッドマイクが近接しているため、イヤホン・ユニットの音が支配的な結果となり、ピチップの有無をデータ上では可視化することができなかった。
次に、イヤホン筐体の固有音等を計測できる(骨伝導)モードでの測定を実施。この測定モードでは、イヤホン筐体固有の影響が周波数特性として計測できる。ピチップを有線ピヤホンに貼り付けると、貼り付けない場合より全般的にレベルが低下。 特に800Hz~7kHzあたりのレベルは10dB以上低下し、共振周波数も高域にシフトしている。
一般的な周波数特性の測定では変化が出なかったため、ピチップを装着した有線ピヤホン1を、骨伝導イヤホンなどの計測で使用する、イヤホン筐体の固有音を計測するための特殊モードで測定。ピチップ有の場合、比較的広範囲でイヤホン筐体固有音のレベルが低下していることがグラフから分かります。一般的な周波数特性計測で変化がなく、イヤホン筐体の振動を計測するモードのみでレベルの低下を測定できたことから、ピチップはイヤホンの周波数特性に影響を与えることなく、イヤホン筐体で発生している固有音を制振していることが確認できます。
【サザン音響による測定結果総論】
実際に試聴すると、ピチップを貼った状態では音の分解能が上がることが確認できた。測定では、イヤホン筐体の共振がダンプされ固有音のピークが低下している事が観測でき、計測結果と音の印象が一致する。
ダミーヘッドのマイクを使用して、有線ピヤホンから鳴っている音楽を録音しました。ピチップの有無の音質の違いをぜひ比較してみてください。
※ 音楽信号は測定信号に比べ大きなダイナミックレンジを持ちます。そのため周波数特性の計測を目的としたダミーヘッドでの音楽信号の録音は、測定信号と比較して難易度が高くなります。今回の録音では周波数特性の計測を優先しました。その結果、ピチップの有無により音量レベルが異なります。比較動画の作成時に双方の音量レベルを揃えることも検討しましたが、音量加工時の音質変化が懸念されるため、あえて加工せず公開しています。
※ 音量が大きいほうが良い音に感じる傾向がありますので、厳密に比較するためには再生機側でのボリューム調整が必要です。今回の場合は、後半のピチップ有の録音レベルが大きいため、ピチップ無のときと同等の音量となるよう、再生機の音量を少し下げてご試聴ください。